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コラム 熱湯コラム「いで湯のあしあと」

台湾ノスタルジー 北投温泉

台湾ノスタルジー 北投温泉

 このコラムを始める以前から国内の様々な温泉に行っているが、今回は初の海外温泉デビューである。
 最近Low Cost Carrier (LCC)と呼ばれる格安航空会社が頻繁に出入りするようになってから、アジアがぐっと身近になった。季節によっては東京に行くよりアジアに安く行けてしまうという。私も今回は、初のLCCを使って台湾に行ってみることにした。

 かつて仕事で行っていた頃から考えると、ほぼ10年ぶりである。ほとんど観光する機会はなかったが、台湾のイメージと言えば占い・夜市・足マッサージ・エステ・小龍包であった。しかしあれこれ調べていたら、台湾は温泉大国であるらしい。

 台北・桃園空港について市内行きのバスに乗り、ホテルにチェックイン後、まずは腹ごしらえ。市内のとある点心レストランで、見事な小龍包と海老シュウマイをぬるい台湾ビールで堪能してから、MRT(地下鉄)に飛び乗った。

 北投(べいとう)温泉は、台北中心部からMRTでほんの30分程度で到着する。
 新北投駅で降りると、覚えのある強い硫黄臭がツンと鼻をつく。こんな街中に温泉があるのかと半信半疑になりながら、案内看板と人の波に沿って歩いて行く。海外進出したあの加賀屋を含む大型の温泉旅館が両端に建ち並ぶ通りを10分ほど行くと、「地熱谷」という看板が出てくる。ここは北投温泉で欠かすことのできない観光スポット。温泉卵なんかを売る屋台をすり抜けていくと、蒸気がもくもくと立ち昇る大きな池に辿り着く。観光客でごった返したこの池は、水温摂氏100℃程である。あの秋田県・玉川温泉と同等の泉質を誇るラジウム泉らしく、この蒸気と硫黄臭を浴びるだけで健康になる気がする。ここに展示してある湯の花が凝固してできた北投石は、日本人地質学者によって発見されたらしい。

 さて、蒸気を浴びた後は実際に入浴。
 駅から歩いてくる途中で公園の敷地内にある公共露天風呂は、水着着用で入浴が可能。入り口のおばちゃんに40元(120円)を支払って入場し、水着に着替える。撮影禁止で写真は残念ながら撮れなかったが、水温の違いによって段々畑のように高温・中温・低温の大きな浴槽があり、どこも人々でいっぱいだった。飛び込みする子供を監視員のお兄ちゃんがピピっと笛で注意していたりする。公共浴場というより、温水プールである。

 まずは一番最下段にある低温のお湯に浸かった。冬といえども気温15度くらいの涼しいそよ風の吹く中での入浴は心地好い。見上げると平和な青空である。しばし浸かった後、最上段に登り、高温のお湯に浸かってみた。高温のお湯は46~48度くらいあり、かなり熱い。地元の元気そうなおじいちゃんやおばちゃんらの割合が多く、熱すぎるが故、手だけ上に上げるという不思議なスタイルで入っていた。私も入ってみたが、熱すぎて1分も浸かってられない。地元の人々は、その高温泉と水のような低温泉を交互に出たり入ったりし、自分の身体を手のひらでバチバチ叩いていた。これが彼らの健康法なのであろう。

 我慢できるくらいの45度程度の高温泉に移動して浸かっていると、ふと聞き覚えのあるメロディーが聞こえてきた。注意して聞いてみると、隣のおじいちゃんが鼻歌で「君が代」を唄っている。びっくりして二度見すると、その隣の別のおじいちゃんが私に「あんた日本人か」と聞いてきた。ハイ、と言うと、「何もないときは私はこの温泉にいつも来ている。ここは14年くらい前にできた。この温泉は、心臓・ホネ・スジによい」と、ぺらぺらと流暢な日本語で独り言のようにしゃべってきた。日本統治時代の面影が、ここでははっきり感じることができるのだ。

 何はともあれ、台湾人が親日的というのは本当だ。2時間くらいたっぷり浸かって上がり、更衣室に移動しようとしたら温泉成分でぬめった床で滑り、尾てい骨を強打した。立ち上がれずうずくまっていると、おばちゃん3人が寄ってきて皆で起こしてくれ、腰を廻せと身振り手振りで話しかけてきた。台湾人はホントに親切である。

 その後夜市へ行き、翌日は故宮博物館でベタな観光をした後、夕方の便で帰国した。一泊二日にしてはみっちりとつまった台湾旅行。まるで国内旅行の予算で、それ以上のコストパフォーマンスを感じさせるこの旅行に、LCCの素晴らしさを再認識したのであった。

 余談であるが、北投温泉で強打した尾てい骨は、3日後にはすっかり治ってしまった。ラジウム温泉の有効成分のおかげか、はたまたおばちゃんらの親切のおかげか・・・。

【北投温泉】
住所: 台北市北投
アクセス
 公共交通機関: MRT淡水線で台北市内より約30分、「北投」駅下車乗り換え、「新北投」駅下車
泉温(源泉): 75度(PH値:1.2)
泉質名: ラジウム泉(硫黄泉)
色・味・匂: 無色透明・硫化水素臭
効能(入浴): 神経痛、筋肉痛、関節痛、慢性膀胱炎、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え性、慢性皮膚病、虚弱自動、病後復期、疲労回復、健康増進、動脈硬化症
料金: 40台湾元

2013年03月01日

コラムフォト

取材担当プロフィール

みなもといずみ
近場から遠出まで、行く先々に温泉マークを見つければすぐに飛び込んでしまうほどの温泉女。出張先ですら、温泉があればタオルとパンツを持ってでかけます。女である以上、温泉に癒される人生は永遠です。行き当たりばったりの旅が大好きな私のあこがれは、スナフキン。点々と旅を続けながらいで湯を求め、足あとを残していきたい!

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