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コラム 熱湯コラム「いで湯のあしあと」

山陰蟹三昧 丹後神野温泉

山陰蟹三昧 丹後神野温泉

 今年も蟹の季節がやってきた。コロナ禍であっても美味しい蟹が採れるのは変わりない。関西に越してきてはや8年、関西人のカニ好きは、東海人のエビ好きに匹敵するものがあると感じていたが、まともに蟹を求めて旅に出るというのは今年が2年目。蟹と言えば日本海側の北陸から山陰にかけて有名であるが、たくさんの美食家関西人たちののどをうならせる蟹料理旅館の中でも、たまたま昨年ネットで見つけてから毎年お世話になろうと(勝手に)決めた宿に、今冬も行ってきた。

 その宿は京丹後市にある。京都市内から車で約2時間半、ガラガラで渋滞のない中舞鶴自動車道をひたすら北上するとあっという間に日本海側に到着。宿につくには早すぎるので、美しい夕日でとても有名な夕日が浦海岸に立ち寄った。12月下旬で前の週は日本海側で豪雪が降ったというニュースがあったにもかかわらず、幸いにもこの日は快晴。大雪の積もった道路を切り抜けて日本海側に出ると、穏やかな日差しが降り注ぐ日本海の大海原が目の前に広がる。前週の雪が嘘のようだ。時刻は午後16時過ぎ、すでに陽が傾き始め、美しい夕日が沈む瞬間にブランコをこぎながら美しい夕日を眺めることができた。

 夕日が浦から車で30分もしないうちにお目当ての宿「すずらん」に到着。ご家族で経営する料理旅館である。とはいえ源泉掛け流しの温泉までついていて、ロビーもお部屋もとても小綺麗にされている。

 到着後、仲居さんたちがお部屋での食事を準備してくれている間に、温泉に入りにいく。大浴場は、洗い場が3つほどでこじんまりとしているが、岩で造られた露天風呂もあり、源泉が惜しみなくとぽとぽと掛け流されている。少し熱めのお湯ではあるが、露天風呂で夜風にあたりながら浸かると身体の内側からぽかぽかとしてくる。

 いい汗をかいて喉がからからの状態で部屋に戻ると、すでに焼き蟹のいい香りが館内全体に充満していた。これから味わう蟹三昧の会席に大いに期待を寄せながら、キンキンに冷えた生ビールをオーダー。至福の瞬間だ。ビールを飲みながら先付をつついていると、仲居さんがありとあらゆる形に変化した蟹を次々に持ってくる。焼きガニ、カニ刺し、甲羅焼き、茹でガニ、カニすき・・・。日本海で採れた松葉ガニを惜しみなく堪能できるフルコースだ。しかもカキフライまでついているという贅沢さ。カニ刺しの美味しさは、この宿で知った。

 焼き網に乗ったカニの香ばしい香りがしてくると「あ、もうこれ食べられますよ。早くしないと焦げちゃいます」と仲居さんに急かされ、熱々の焼きガニにかぶりつく。そこからは、誰もがそうであるように、無言で蟹の殻と格闘し、それぞれに調理された美味なるカニ料理にひたすら集中する。最後は、全てのエキスがふんだんに出たカニすきの出汁で作ったぞうすいでシメた。ふとテーブルわきを見ると、茹でガニが丸々一匹残っている。気を利かせてくれた仲居さんが、「食べきれなければお持ち帰り用の箱に詰めますよ」と言ってくださった。

 さて翌朝、貸し切り状態の朝風呂に入りに行き、露天で長湯をしながら朝日を浴びた。透明で柔らかいお湯の中に身を沈め、昨夜の蟹フルコースに思いを馳せる。昨夜あんなに食べたのに、朝食の匂いがしてくると、空腹を感じずにはいられない。朝食会場にいくと、蟹の足が入ったお味噌汁と、地元でとれた新鮮な卵、あじの干物など、これまた立派な食事が用意されていた。あんなに満腹だった昨夜の私の胃袋はどうなっちゃったのかと思うくらいの食欲で朝食を平らげた。

 帰宅後、食べきれずに持ち帰ってきた茹でガニで、カニ鍋、トマトクリームのカニパスタと、更に2日間も蟹三昧をエンジョイできたのは、おまけの話である。蟹料理の余韻を味わいながら、来年も絶対に京丹後へ行こうと誓わずにはいられないのであった。

【丹後神野温泉】
住所: 京都府京丹後市久美浜町葛野369
電話: 0772-83-0464
URL: http://www.kumihama-suzuran.com
アクセス: (車)大阪・京都方面より中舞鶴自動車道宮津ICよりR312号で約40分 (電車)京都丹後鉄道、小天橋駅より徒歩10分(無料送迎有)
源泉名: 丹後神野温泉
泉質: カルシウム・ナトリウムー塩化物・硫酸塩泉(低張性弱アルカリ性高温泉)
温度: 48.8℃
色・味・匂い: 無色透明・無味・無臭
効能: 神経痛・筋肉痛・関節痛・五十肩・運動麻痺・関節のこわばり・うちみ・くじき・慢性消化器病・痔疾・冷え性・病後回復期・疲労回復・健康増進・きりきず・やけど・慢性皮膚病・虚弱児童・慢性婦人病・動脈硬化症

2021年03月04日

コラムフォト

取材担当プロフィール

みなもといずみ
近場から遠出まで、行く先々に温泉マークを見つければすぐに飛び込んでしまうほどの温泉女。出張先ですら、温泉があればタオルとパンツを持ってでかけます。女である以上、温泉に癒される人生は永遠です。行き当たりばったりの旅が大好きな私のあこがれは、スナフキン。点々と旅を続けながらいで湯を求め、足あとを残していきたい!