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コラム 熱湯コラム「いで湯のあしあと」

潮風撫でる日本海の湯 丹後温泉

潮風撫でる日本海の湯 丹後温泉

 真夏の日本海へ行ってきた。私にとって日本海といえば、冬のカニを食べに行く場所と決まっているのだが、今回は敢えて、毎冬カニを食べに行く宿に、夏の海鮮を求めて行ってきた。

 今回の行き先は、あの幻の間人(たいざ)ガニが採れる場所、京都北部・京丹後市間人町にあるはしうど荘。元々国民宿舎だったこの宿は、建物こそ古いが、和室は清掃も行き届いており、出てくる料理はとても新鮮で、日本海を望む素晴らしい天然温泉まで併設している。京都市内から車で約2時間半ほど、全く渋滞のない京都縦貫道をひたすら北上すると到着する。

 ご存知の通り、夏の日本海は、冬のそれと全く違う表情を見せる。どこまでも晴れ渡る青い空が海面に映り、静かなエメラルドグリーンの海が遥か遠くに続いて、あの冬の噴き上げる荒波はどこに行ったのか・・・宿に到着して早速、天然温泉に浸かり、露天風呂から見える凪の日本海を眺めながら、ふとそんなことを思う。真夏の温泉は暑いと嫌厭する人もいるかもしれないが、ここの露天風呂は適温で、少し滑りを感じるお湯に浸かりながら、肌を撫でる潮風がとても気持ち良い。

 

 まだ明るいうちから夕食が始まった。夏のメニューは岩牡蠣と海鮮焼きのフルコースである。日本海で養殖された岩牡蠣はびっくりするほど身が大きく、ぷりっぷりだ。「今年の牡蠣は、本当に大きく育ちました。こんな大きいのは珍しくて当たり年です。お客さんラッキーですよ」と宿の方に言われ、更に期待が増す。それ以外にも、新鮮なお刺身、牡蠣の白味噌焼き、カサゴの煮付け、サザエ、えび、いか、カニなどの海鮮炭火焼きなど、次々とすごいボリュームの料理が提供されて追いつかない。キンキンに冷えた冷酒でほろ酔いになってきたら、これ以上の幸せってあるのかしらと思ってしまう。

 ここ京丹後は、夕日が美しいことでも有名である。夕日が沈む頃に、夕食の途中ではあったが席を立ち、外に出て美しい夕日を眺めることができた。

 大満足の海鮮フルコースをいただいた後、部屋に戻りクーラーを消して窓を開けると、日もすっかり沈んでおり、虫の鳴く声と波の音だけが聞こえてくる。少しお腹もこなれてきた頃、再度温泉に浸かりに行った。静まり返った夜の露天風呂は、貸切り状態である。昼間の暑さはどこへやら、ぬるめのお湯に出たり入ったりしてふと空を眺めると大きな満月が夜空を照らしていた。遠くにイカ釣り漁船の灯りが見える。潮風と静かな波の音と月光浴。その中で浸かるお湯は、なんだか大きなエネルギーに包まれているようで、自分の体内にパワーチャージされていく不思議な感覚を覚えた。

 翌朝また、朝風呂をたっぷり堪能した後、朝食ではあの京丹後名物の一つである鯖のへしこが出た。米糟に漬けたへしこは、たったの二切れでもしょっぱくて、炊き立てのツヤツヤ白米を山盛り2杯ペロリといけちゃうのだった。真夏の塩分チャージにはもってこいの朝ごはんメニューである。

 チェックアウトする際に、宿のご主人にお礼を言って出ようとしたら、「今度はアワビ海鮮プランっていうのもあるから、またおいで」と言われた。さすがは日本海、新鮮な海鮮なら何でもござれだ。幻の間人ガニだけでも大きな売りになるのに、冬のカニだけというイメージは完全に払拭された真夏の日本海の旅であった。

 

【丹後温泉 はしうど荘】
住所: 京都府京丹後市丹後町間人632-1
電話: 0772-75-2212
アクセス: (電車)京都丹後鉄道・網野駅から約20分 (車)京丹後大宮ICから車で約30分
源泉名: 丹後温泉
泉質: ナトリウム・カルシウム硫酸塩泉
温度・PH値: 40.9度、8.33
色・味・匂い: 無色透明、微硫化水素臭
効能: 神経痛・関節痛、動脈硬化、肩こり・関節のこわばり、冷え性、打ち身・捻挫、やけど・切り傷、慢性皮膚病・消化器病、運動麻痺、病後・疲労による体力の回復、他

2023年08月18日

コラムフォト

取材担当プロフィール

みなもといずみ
近場から遠出まで、行く先々に温泉マークを見つければすぐに飛び込んでしまうほどの温泉女。出張先ですら、温泉があればタオルとパンツを持ってでかけます。女である以上、温泉に癒される人生は永遠です。行き当たりばったりの旅が大好きな私のあこがれは、スナフキン。点々と旅を続けながらいで湯を求め、足あとを残していきたい!