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コラム 熱湯コラム「いで湯のあしあと」

群馬・万座温泉

群馬・万座温泉

 絶景露天風呂が大好きだ。
 『標高1,800mにある天空の濁り湯』と聞いて、お腹の底からふつふつと湧き出す好奇心を抑えられる日本人がいるだろうか?

 濁り湯好きの知人が言った。
 「これまでで一番よかった所は、万座温泉ですねぇ。」
 群馬県にあると聞いて一瞬ひるんだけど、調べてみたら志賀高原の向こうじゃないの。行けない距離ではない。標高1,800mに位置し、絶景が見下ろせて、春でも雪が残っていて、温泉特有の硫黄臭がぷんぷんする万座温泉。 特に濁り湯好きにはたまらないらしい。そして話を聞いたその週末に、私は中央道で長野方面へ向かったのだった・・・。

 5月もGWを過ぎたというのに、まだ雪が所々に残る志賀高原の山間の道を抜ける。風がすごく冷たい。下界は半袖だっていうのに、まだスキーをやっている人もいる。2m以上積もったまま凍った雪の壁の間を通り抜け、眼下に広がる絶景を眺めながら、長野-群馬の県境を過ぎて約20分、万座温泉に到着した。

 万座温泉といえば、プリンスホテルが有名らしいが、今回宿泊したのは、5月1日にリニューアルしたての旅館『万座亭』。別館では、湯治もできるらしい。車を降りると、強い硫黄臭がつんと鼻をつく。旅館から立ち上る湯気を見ると、湯量豊富で湯質の濃い源泉が掛け流されているのが、容易に想像できる。

 考えてみれば、濁り湯は白骨温泉以来だ(最近、つるすべのアルカリ性炭酸泉ばっかりだったから)。同じ濁り湯でも、あそこは空気と触れ合うと白濁する炭酸泉だったが、ここ『白鐡(はくてつ)の湯』は全く違う湯質である。80度の高温を保つ酸性の強い源泉は、万病に効くとされ、昔から湯治客を癒してきた。源泉名は『鉄湯1号』。鉄人28号の姿をぼんやり頭に浮かべながら、内湯へ直行した。

 なるほど、確かにお湯に身を沈めると、なめらかで柔らかい肌触りというよりは、肌が「きゅっきゅっ」といいそうな、さらっとしたお湯である。さらりとしながらも、成分が肌に心地よく溶け込むようである。そして、すごく熱い。源泉掛け流しのままでいきたいところだが、とてもじゃないけど入れないので、仕方なく「セルフ」で加水しながら沈む。これだけ熱いと、病原細胞も死滅するに違いない。そして濃い乳白濁色と硫黄臭が、その効能豊かな泉質を改めて感じさせる。

 万座亭の館内には、貸切風呂2箇所のほか、内湯と露天が男女各ひとつずつ。
 内湯はヒバの木を組んだ昔ながらの造りで、年季を感じさせる。白濁したお湯とマッチして、何とも素敵な雰囲気を醸し出す。そこから外に続く廊下を行くと、丸太で造られたログハウス風の露天風呂に出る。夜は辺りが真っ暗だが、頭上は満天の星空。また、朝風呂では、うぐいすの鳴き声をBGMに、雪の残る万座高原が一面に見渡せるのだ。

 そして料理。
 旬の地元食材を使った、目にも舌にも美しい会席料理が並ぶ。厚切り和牛のヒレステーキ、タラの芽の天ぷら、岩魚の塩焼き、季節の鍋・・・温かいものは都度出してもらえるキメ細やかなサービスもウレシイ。しかもすごいボリュームで食べきれない。麦焼酎『至福の陶酔』を片手に、まさにこの至福に陶酔するのだった・・・。

 ところで、住み込みのスタッフさんたちは、毎日白鐡の湯に浸かるらしい。
 「うらやましい!」と言ったら、「でも(酸性が)強すぎて、あんまり入ると肌がカサカサになっちゃうんですよ。」と言っていた。

 しかし、景色、雰囲気、効能、料理、清潔さ、サービス、コストパフォーマンス・・・・・・何をとっても素晴らしい。滞在中4回もお湯に浸かり、かなりドライスキンになってしまいつつも、満座亭は私の中で、見事に上位3位内にランクインしたのだった。

【万座温泉 万座亭】
住所: 群馬県吾妻郡嬬恋村万座温泉
電話: 0279-97-3133
アクセス
 車の場合: 中央自動車道-長野自動車道-上信越自動車道-信州中野IC-志賀高原方面-万座温泉方面へ(R292) ICより約50分(アクセスマップ:http://manzatei.com/kotu.html
温泉名: 万座温泉 鉄湯1号
泉温(源泉): 80.8℃(PH値2.8)
泉質名: 酸性・含硫黄-マグネシウム・ナトリウム・硫酸塩温泉(酸性低張性高温泉)
色・味・匂: 乳白濁色・硫化水素臭
効能: 糖尿病・五十肩・神経痛・関節痛・リューマチ・皮膚病・高血圧・動脈硬化・胃腸病・慢性消化器病・通風・痔疾病・婦人病・冷え性・美肌
料金: 日帰り入浴 ¥1,000(大人) ¥500(小人)、宿泊 ¥9,450 ~ ¥21,000(一泊二食付)
公式HP: http://manzatei.com/

2010年06月17日

コラムフォト

取材担当プロフィール

みなもといずみ
近場から遠出まで、行く先々に温泉マークを見つければすぐに飛び込んでしまうほどの温泉女。出張先ですら、温泉があればタオルとパンツを持ってでかけます。女である以上、温泉に癒される人生は永遠です。行き当たりばったりの旅が大好きな私のあこがれは、スナフキン。点々と旅を続けながらいで湯を求め、足あとを残していきたい!