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コラム 熱湯コラム「いで湯のあしあと」

北の大地の鼓動 登別温泉

北の大地の鼓動 登別温泉

 今年のGWに、北海道にいってきた。ほぼ10年ぶりの北海道、場所選びに迷ったが、GWの1週間前に札幌でも大雪が降ったというニュースを聞いて若干ビビり、最も暖かい場所として道南を行脚することに決めた。

 行く先々で温泉地に必ず泊まるということを決めたら、JR路線図を引っ張り出し、登別から洞爺湖、函館、おまけで奥尻島に行くというルートで旅程を組み立てた。改めて考えてみたら、北の大地は温泉の宝庫である。海あり、山あり、離島あり、行く先々で有名な温泉処から秘湯まで数々の温泉地が勢揃い。今回はまず最初の目的地、北海道の温泉の代名詞でまず一番に挙げられるであろう登別温泉をハイライトする。

 新千歳空港からJRと路線バスで約2時間。札幌からも直行バスで1時間余りと、意外に簡単なアクセスで人気のある登別温泉に到着。温泉街は20軒に満たない宿泊施設しかなくこじんまりとしているが、飲食店や土産店など、観光客で賑わっていた。その歴史は古く、近年の傾向としては中国や韓国などの訪日外国人が多くみられ、こんな山奥なのに日本人以上のアジア人がいるのは異様な光景でもある。

 登別温泉といえば地獄谷。信州や別府など、全国で「地獄谷」と呼ばれる温泉地は多々あるが、さすがは北の大地。クッタラ火山の活動によりできた爆裂火口跡は、直径450m、面積11ヘクタールと、そのスケールは圧巻だ。温泉街から徒歩5分ほどにあるここの地獄谷は、山一帯に多くの噴気孔から湯煙がもくもくとたちこめ、文字通り「地獄絵図」のようである。この地獄谷から、地域の各宿泊施設に温泉が送られ、まさに源泉の宝庫であることを感じられる。

 地獄谷を流れる川べりは湯の花で白く固まり、それでも沸々と川から湯煙が立ち込める。観光用に設置された通路は、まるで地獄の中で三途の川を渡る橋のようだ。酸素マスクがいるくらいの濃度で硫黄の臭いが一面に広がり、あの世に来てしまったのではないかと錯覚するほどである。夜のライトアップされた地獄谷は、神秘的でさえある。こんな地獄絵図を目の当たりにしたら、どんな温泉が待っているんだろうと、地殻の奥底から湧き出る大自然の鼓動にわくわくせずにはいられない。

 地獄谷から周辺の山を心地よく散策した後、宿にチェックインして早速大浴場へ直行した。大きな露天風呂に入ると、期待通り、濁り湯の硫黄泉である。惜しみなく湧き出る源泉は、とっても熱い。身体の芯から永遠に暖まるのだ。

 湯につかり体育座りをすると、足元にひっかかるものがある。手ですくってみると、白いどろどろの湯の花がたっぷりとつかめた。さっきの地獄谷から引かれた100%の源泉だ。その泥を顔にたっぷりと塗りたくったら、パラオのミルキーウェイでやった泥パックを思い出した。まさに天然の泥パック。顔や身体中のすべての角質は、果たしてこの泥パックによりすべて除去されたのであった。身体の芯から暖まり、ビールをたくさん飲んで寝たら、翌朝恐ろしいほどびっしょりと寝汗をかいていた。

 ちなみに地獄谷なだけに、ここのウリは地獄キャラのようだ。温泉街の所々に、赤鬼・青鬼がいたり、からくり閻魔大王が時間がくると叱咤したり、間欠泉がすごい勢いで噴き出したり、一通りベタな地獄観光をたっぷり楽しめる。お昼ご飯には、行列を作るラーメン屋「味の大王」へ。ここでは真っ赤なスープの閻魔ラーメンを賞味できる。こくのある味噌ラーメンベースのスープには、1丁目から10丁目まで、唐辛子の量の調整で辛さを選べる。隣のお兄さんが7丁目を食べて「これが限界かも・・・」とうなっていた。そこまでいくともはや我慢大会である。

 久々に大地の鼓動を感じた北の温泉旅行。10年前とすっかり変わった観光客模様だが、神聖な大地の自然は昔のまんまである。スケールの大きさに感動しながら、次の温泉地、洞爺湖へ向かった。源泉を求め、道南の行脚はさらにつづく・・・。

【登別温泉】
住所: 北海道登別市登別温泉町
アクセス
 新千歳空港→JR登別駅(特急で約50分)→道南バスにて約15分
  札幌駅→登別温泉(道南バスにて約2時間)
源泉名: 一号乙泉・その他
泉温(源泉): 58.6℃(PH値 2.3)
泉質名(源泉): 酸性硫化水素泉
色・味・匂: 乳白色濁・酸味・硫黄水素臭
効能: 神経痛・筋肉痛、関節痛・五十肩・運動麻痺・関節のこわばり・うちみ・くじき・慢性性消化器病・痔疾・冷え性・病後回復・健康疲労回復・きりきず・慢性婦人病・動脈硬化症・糖尿病・高血圧症

2017年05月29日

コラムフォト

取材担当プロフィール

みなもといずみ
近場から遠出まで、行く先々に温泉マークを見つければすぐに飛び込んでしまうほどの温泉女。出張先ですら、温泉があればタオルとパンツを持ってでかけます。女である以上、温泉に癒される人生は永遠です。行き当たりばったりの旅が大好きな私のあこがれは、スナフキン。点々と旅を続けながらいで湯を求め、足あとを残していきたい!