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コラム 熱湯コラム「いで湯のあしあと」

愛知・三谷温泉

愛知・三谷温泉

 温泉旅館を選ぶとき、何を基準にするか?
 温泉旅館とは当然ながら、日本人にしか表現できない日本人のためのリゾートである。旅館にはそれぞれの心地よさがあり、どこの温泉旅館もここ最近はこぞって集客するために、泉質、サービス、佇まい、料理など、ありとあらゆる分野での競争力を高め、それらのクオリティはどんどん上がっている。

 しかし、そういった高級温泉旅館ばかりを回っていては、ある一面性でしか捉えることができず、本当の良さがわからない。様々な温泉旅館に泊まって比較してはじめて、ウンチクを語れるのである。

 個のホスピタリティを重視するひっそりとした秘湯の温泉旅館もよいが、今回泊まったのは、ひと昔流行った(に違いない)、いわゆる大規模集客ができる温泉旅館・ひがきホテル。各旅行会社が、慰安旅行なんかの団体ツアーで使っていると思われる旅館である。そういった旅館が集積している温泉地というのは、たいていちょっぴり“ひなびた感”があるのである。

 みかんがたわわとなるオレンジロードを走り抜けると、太平洋の暖かい空気に包まれた三河湾沿いに、温泉街が出てくる。その中のひとつが、三谷温泉である。海を隔てた三河湾の反対側には、西浦温泉街も見える。今は色褪せてしまった看板や、つぶれかけの喫茶店なんかがぽつぽつと残っているが、昔はこの辺りでは屈指の温泉リゾート地としてバブっていたと思われる雰囲気がなんとなく残っている。

 しかし私は、こういう温泉地が嫌いというわけではない。どっちかっていうとこんなのもアリである。過去の栄光を忘れ去られ、なんだかちょっぴり淋しい感じもしないではないが、過去に繁栄した時代を誇りに、すごく「頑張ってる」気がするからである。こういう温泉地を見ると、純粋に「がんばれ!!」とエールを送りたくなってしまう。

 旅館(ホテル?)に到着すると、お抹茶とお菓子が出てきた。ロビーではゲストを歓迎すべく、琴の生演奏がされていた。バリ島なんかのリゾートホテルでよくある「歓迎の舞」に値するものだと思う。こういうのも、日本人が表現できるサービスのひとつなんだろうな。

 ここの露天風呂はどうやら最近改築したらしく、そこだけ取るとカンペキな造りだった。和でまとめられた広々とした浴場は、りっぱな石で囲まれており、時折ざざざーっと温水が滝のように噴出す。湯船の中心には、常にこぽこぽと新しいお湯が沸いている。旅館自体が高台に立っているため、眼下には雄大な海が拡がる。周囲には南の街に特有の、椰子の木も茂っている。お湯はちょっぴり熱めで、素肌をなでる海からのひんやりとした風と合間って、大変心地よい。たいていの日本人が思い描く「海が見える露天風呂」を実際にかたちにしたらこうなる。期待を裏切らない露天風呂・・・つまり「ベタ」なのである。

 ベタな温泉にはベタな入浴方法がふさわしい。誰もいない広い湯船に入ったら、とりあえず「ワニ歩き」で一周してみた。その後で、やっぱり誰もいないから、平泳ぎである。湯が熱めで顔はつけられないから、クロールはさすがにできなかったけど。

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取材担当プロフィール

みなもといずみ
近場から遠出まで、行く先々に温泉マークを見つければすぐに飛び込んでしまうほどの温泉女。出張先ですら、温泉があればタオルとパンツを持ってでかけます。女である以上、温泉に癒される人生は永遠です。行き当たりばったりの旅が大好きな私のあこがれは、スナフキン。点々と旅を続けながらいで湯を求め、足あとを残していきたい!

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