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コラム 熱湯コラム「いで湯のあしあと」

極上の開放感 黄金崎不老ふ死温泉

極上の開放感 黄金崎不老ふ死温泉

 絶景を眺められる温泉が大好きだ。国内には、素晴らしい絶景を臨める温泉が多々あるが、海沿いの温泉でここは日本一ではなかろうか。何かで写真を見たときからずーっと行きたいと思っていた場所のひとつ。いつ宿をとろうとしても、たいてい週末は満室。そもそも遠い故、夢の温泉宿のひとつになっていた。

 世間が新型コロナウィルスで大騒ぎの3月初旬、不謹慎にも今なら空いてるんじゃないかと突然と思い立ち、調べたら案の定予約ができた。部屋を押さえたら、溜まったマイレージで青森行きのチケットを予約。伊丹からプロペラ機で、2時間弱で青森空港に到着した。

 ちょうどお昼時だったので、空港で青森市のB級グルメ「味噌カレー牛乳ラーメン」を注文し、腹ごしらえをする。想像し難い名前と見た目のそのラーメンは、それぞれの違うコクが実に美味く混ざり合って、絶品だった。レンタカーに乗り込んで約120kmの海沿いの道のりを2時間ほど運転して到着したのは、黄金崎不老ふ死温泉だ。

 名前やイメージから、かなり鄙びた温泉宿を想像していたのだが、意外にも近代的な建物でモダンにリノベーションされている。通された客室に入ると、目の前には日本海。全室がシービューで、眺望は間違いなく確保されている。これは温泉も期待できるとわくわくしながら、浴衣に袖を通し、夢にまで見た海沿いの露天風呂へ向かった。

 当日の日の入りは17時半頃とのこと。幸い天気は快晴、明日も快晴予報である。夕日が見られないわけがない。最初に内湯で身体を清めてから、17時頃に露天風呂へ繰り出した。露天は混浴である。隣に女性用の露天風呂もあるが、ここは羞恥心を捨てても、必ず湯浴みを借りて混浴に入ることをおすすめする。夕日を見るベストポジションが混浴にしかないからである。

 露天に行ったら、ラッキーなことに誰もまだいなかった。いそいそと浴衣を脱ぎ、ちゃぽんとその黄金色の湯に身を沈めた。すぐそこは、海である。海抜がほぼ同じ高さのお湯に入って、日が沈むのを待った。気づけば一人、また一人と集まってきて、あっという間に20人ほどになっていた。老若男女、みな同じ西の方角を向いて日が沈むのを待っている。近くに浸かっていたおじさんが、どこからきたの、と声をかけてくる。京都ですと言うと、ワシは大阪や、あっちのお兄さんは神戸言うてたで、なんか関西多いな、等と、会話の輪が広がる。初対面の人たちが裸同士でただ夕日を見るだけのためにお湯につかり、とりとめのない会話をしている。なんて平和な光景なんだろう・・・コロナウィルスの騒ぎが別世界のことのようだ。

 そうしているうちに、すごい早さで夕日が沈み始めた。海面に近づくにつれ、どんどんスピードが加速していく。遠くに見える一直線の水平線に大きな夕日が沈んでいくのを眺めていたら、地球が丸いということを再認識する。それまでざわざわとおしゃべりしていた全ての人が、夕日が水平線に沈む瞬間を、息をのんで見守る。毎日の繰り返しの光景なはずなのに、何とも比喩しがたい、ただただ美しい光景であった。それをこの金色に光る源泉に浸かりながら眺められるなんて、極楽以外何物でもない。夕日が沈んでしまうと、ああ、というため息がどこからともなく聞こえ、一人、また一人と火照った身体を海風で冷ましながら、露天風呂を後にした。

 夕食は、帆立、本鮪、真鱈、鮭など、地元の漁場でとれた海鮮を使ったお刺身や鍋、焼き物、牛タン等、食べきれない量のごちそうであったし、翌朝はビュフェスタイルで、新鮮な野菜や干物、作り立ての豆腐など、ひとつひとつの素材を生かした大満足なメニューであった。米が美味しいところはだいたい全てのものが美味しい。

 翌朝晴れ渡った空を見ながら、館内にある露天風呂に浸かる。波の音と源泉の沸き出すちょろちょろとした音のハーモニーを聞きながら、一泊で帰宅せざるをえないことに後ろ髪をひかれる思いにふけるほかなかった。

 この辺りはこの温泉以外何もない。ただただ、夕日が沈んで潮騒が聞こえるだけであるが、それ以上何を望もう。人々が、地方にある温泉地の素晴らしさに魅了されて止まないのは、温泉以外何もないからなのではないか、と思いながら、「不老不死」を願い、夢の温泉地を後にした。

【黄金崎不老ふ死温泉】
住所: 青森県西津軽郡深浦町大字艫作字下清滝15
電話: 0173-74-3500
アクセス: 青森空港から車で約2時間、または青森市より車で約2時間半
源泉名: 不老ふ死温泉
泉質: 含鉄-ナトリウム・マグネシウム・塩化物強塩泉
温度・PH値: 52.2℃、6.68
効能: 神経痛・腰痛・リュウマチ・創痛・皮膚病
その他: 源泉掛け流し、加水

2020年04月15日

コラムフォト

取材担当プロフィール

みなもといずみ
近場から遠出まで、行く先々に温泉マークを見つければすぐに飛び込んでしまうほどの温泉女。出張先ですら、温泉があればタオルとパンツを持ってでかけます。女である以上、温泉に癒される人生は永遠です。行き当たりばったりの旅が大好きな私のあこがれは、スナフキン。点々と旅を続けながらいで湯を求め、足あとを残していきたい!
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